【高血圧の検査と診断】
高血圧の検査は個人の心血管リスクの総合評価と二次性高血圧の診断につながる検査を費用対効果を考慮して行う。 心血管リスクの総合評価には,家庭血圧を含む血圧レベルに加え,新たなリスクとしてメタボリックシンドロームと慢性腎臓病(CKD)に関連する因子と,臓器障害の評価を行う。 臓器障害の評価は,糖尿病や心血管疾患の既往がある高リスク患者においては,正常高値血圧から行う。 臓器障害評価の特殊検査は,心臓エコー,頸動脈エコー,頭部MRI検査を代表とし,推奨される検査を,適宜行う。 問診,身体所見,一般臨床検査を重視し,二次性高血圧が疑われる場合は,特殊スクリーニング検査を行う。
3.検査と診断
高血圧患者の診療にあたっては,[1]本態性高血圧か二次性高血圧かを診断,[2]心血管リスク因子(特にメタボリックシンドロームとCKDに関連する)の存在と,[3]その背景となる生活習慣を把握,[4]心血管疾患の合併や臓器障害,さらに[5]家庭血圧を参考にした高血圧の重症度を考慮する。
1)病歴
高血圧を指摘された時期とその状況(健診,診察時,自己測定など),持続期間,程度,治療経過を聴取する。特に,治療歴のある場合は,降圧薬の種類と有効性・副作用を確認する。 家族歴として,高血圧,糖尿病,心血管疾患の発症の有無と発症年齢に加え,高血圧リスクにつながる生下時低体重や幼少時期の体重増加,ならびに妊娠歴がある女性では妊娠時の高血圧,糖尿病,蛋白尿を指摘されたことがないかを聴取する。 生活習慣に関しては,運動習慣(頻度と強度),睡眠習慣(睡眠時間と睡眠の質),食習慣(食事内容や塩分や甘いものなどの嗜好),飲酒・清涼飲料水ならびに喫煙(量と期間),性格と精神心理状態(不安感や抑うつ傾向),ストレス度(職場,家庭)を聴取し,生活習慣の全体像を把握する。 高血圧患者は通常,無症状ではあるが,二次性高血圧や高血圧合併症,臓器障害の存在を疑わせる特異的症状の有無を確認する。二次性高血圧を示唆する徴候としては,これまでの体重増加の経過や他のメタボリックシンドローム関連危険因子(糖尿病や脂質代謝異常)に加え,夜間頻尿や夜間呼吸困難,早朝の頭痛,昼間の眠気,抑うつ状態,集中力の低下などの自覚症状,さらにいびきや無呼吸を家族から指摘されたことがないかなどの睡眠時無呼吸症候群を疑う徴候を確認する。また,これまでの血尿,蛋白尿,夜間頻尿など腎臓病や非ステロイド性抗炎症薬,漢方薬,経口避妊薬などの薬剤使用状況などを確認する。 臓器障害や心血管疾患の病歴を聴取する。脳血管障害に関しては一過性脳虚血発作,筋力低下,めまい,頭痛,視力障害,心臓疾患に関しては呼吸困難(労作性・夜間発作),体重増加,下肢浮腫,動悸,胸痛,腎臓病に関しては多尿,夜間尿,血尿,蛋白尿,末梢動脈疾患に関しては間欠性跛行や下肢冷感などの症状の有無を確認する。
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